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国内不動産鑑定評価・調査

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国内不動産鑑定評価・調査

墓地の評価


 墓地は極めて特殊な用途であり、新設するにあたっては周辺住民の同意を得るなど厳しい条件が要求され、公的制限を受けるものです。 具体的には「墓地、埋葬等に関する法律」により、墓地の新設・新規経営には都道府県知事の許可が必要となります(第10条)。 そのため、公共事業を進める際に代替地を得ることは困難を伴います。

 また墓地はその特殊性、地縁的関係等から、権利者の価値意識の格差が大きく、買収においての価格評価は慎重さが要求されます。

 埋葬済みの墓地はその性格上、永遠に使用されるものであり、市場性はなく、また厳しい公的制限・基準をクリアした土地であることから周辺地との間に代替性はなく、価格は一般に周辺宅地価格より相当高水準となります。


 墓地には寺院墓地、公園墓地、村落墓地(集落共有墓地)、個人墓地の種類があり、評価を行ううえではその種類別に着目し、価格形成要因の格差等に留意する必要があります。


   <墓地の種類>

種 類

備 考

寺院墓地

 寺院に入壇した者による墳墓施設による墓地

公園墓地

 宗派を問わず、何人でも墳墓を所有できる経営型の墓地

村落墓地

 地縁的な関係者により成立した墓地

個人墓地

 個人が自己所有地に自家用として埋葬して成立した墓地


 このうち寺院墓地と公園墓地は、永代使用料という名目で1聖地(約1u弱。公園墓地では主に90cm×90cmが多い)ごとに分譲されるのが通常です。 つまり墓地の所有権構成としては


   「完全所有権価格 = 永代使用料(永代使用権) + 墓地底地価格」


と表されます。その割合については、収用委員会の裁決事例によると9:1となっています。 墓地はその性格上、永久に墓地として使用されることが通常ですので、墓地底地は、一般の底地(借地権の付着する土地)と違って更地復帰の可能性、 すなわち市場性や担保価値の回復の可能性はありませんので、用益権である永代使用権の価格と底地の合計額は墓地の完全所有権価格に等しくなると考えられます。 なお、村落墓地、個人墓地には永代使用料の概念はありません。


 墓地の評価指針としては、中央用地対策連絡協議会の評価基準(昭和62年4月13日)が唯一見られる程度です。 それによると、以下の通り規定されています。

2.寺院墓地は次により評価するものとする。

 周辺の土地の価格水準に墓地とするために必要な造成工事費を加えて得た価格を標準とし、周辺の宅地の価格水準に墓地に係る要因を加味した価格を比較考量して評価するものとする。

 この場合における墓地に係る要因は、

  ア.墓地と宅地の造成の程度の差

  イ.墓地と宅地の有効利用率の差、墓地の緑地化率

  ウ.寺院の格式、名声

  エ.墓地と宅地の希少性の差

  オ.宅地の個別的要因の墓地に与える影響の程度の差

  カ.新設墓地に対する規制の程度

 等とする。

3.公園墓地は次により評価するものとする

(1)周辺の土地の価格水準に墓地とするために必要な造成工事費を加えて得た価格を標準とし、周辺の宅地の価格水準に墓地に係る要因を加味した価格を比較考量して評価するものとする。

 この場合における墓地に係る要因は、

  ア.墓地と宅地の造成の程度の差

  イ.墓地と宅地の有効利用率の差、墓地の緑地化率

  ウ.墓地の知名度

  エ.墓地と宅地の希少性の差

  オ.宅地の個別的要因の墓地に与える影響の程度の差

  カ.新設墓地に対する規制の程度

 等とする。

(2)墓所使用権価格及び底地価格は、墓地の区域を墓所及び共用施設地(道路、緑地、管理施設、駐車場等)に区分し、(1)により算定した墓地価額をその区分ごとに配分して墓所部分の価額を求め、次いで、これを個別的要因に即して各墓所に配分し、さらに使用権と底地に配分することにより求めるものとする。

 なお、この場合、使用権と底地の価格配分は、使用権9、底地1の割合を標準とする。

4.村落墓地は次により評価するものとする。

(1)周辺の土地の価格水準に墓地とするために必要な造成工事費を加えて得た価格を標準に、周辺の宅地の価格水準を比較考量して評価するものとする。

(2)略

5.個人墓地は次により評価するものとする。

 4の(1)により評価するものとする。


 これによると、評価手法は素地価格に造成工事費や諸経費等を加算する原価法が標準とされていますが、 諸経費である近隣対策費の査定が困難でしかも多額であろうこと、また、そもそも市街地では墓地法第10条の許可が得られる可能性が極めて低く、 村落部であっても容易ではないため、それらをコストとして計上することが非常に困難と言えます


 そのため、墓地の新規分譲事例による比較法(比準価格)を採用して比較考量することが有効であると思われます(墓地は第三者間で市場取引されるものではないですが、新規分譲事例との比較は、墓地の新規調達に要する原価の比較という性格も有するため、説得力があると考えられます)。

 墓地の新規分譲事例との比較では、寺院墓地、公園墓地については永代使用権の所有権価格への補正、墓地としての品等格差の判定、周辺環境やアクセス性等の位置的条件格差の判定などを行うことが必要です。(2012年11月)




 
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